いざお寿司を作るにしてもネタはサーモン、シャリがあると言っても日本のお米とは程遠く茹でて使うからサラッサラッで粘り気無し。当然お醤油もあるわけないので仕方なく塩とレモンでサーモンに下味をつけお米は塩・砂糖・ヴィネガーを使い味付け。これだけでは足りないだろうと思い魚料理を一品用意しておきました。
食事を始めて間もなくパトロンがやって来て「寿司最高だ!」と言って戻っていきましたが、自分で食べても美味しくないしシェフも美味しくないと言う。まぁしょうがない。ただ魚料理は美味しいと誉めてくれ「俺と一緒にやるか?」と誘ってもらえたので、即答「ウィ、メルシー!」←発音が微妙に違います(笑) この日のランチからシェフの補助が始まり一歩前進です。
一度認められると一気に門が開く感じですね。仕込みの段取りから発注まで全て任してくれるようになるのにさほど時間もかかりませんでした。オードブルのポジションにいたアレクシーという名の今でも仲の良い料理人の仕込みも手伝うこともありましたが、一緒に食事に行くとフランス人の陣取っていた席に何と僕の席まで空けてあったときにはたまらなく嬉しかったなぁ。 休み前の昼に1週間貯めたチップをスタッフ皆で分けるのですが、シェフの心意気で僕もフランス人達と同じにしてもらえました。
日本から砥石を持ってきてたので昼休みには包丁をよく研ぎ、抜群の切れ味に皆大喜び、アレクシーには研ぎ方を教えてました。
いつ頃からかディナーが終わると毎晩テラスでシェフとアレクシー、僕の3人で1リットルのビールを2本飲みながら料理談義です。僕が会話に入っているときは二人とも分かろうとしてくれているし分からせようとゆっくり簡潔に話してくれるんですけど、二人で会話し出すと超早口。所々しか理解できずひたすらビールを飲む(笑) そこで驚いたのは、シェフに対しても経験関係なく自分の意見をはっきりと言うんです。正直日本では考えられない光景でした。
当時の年齢は、シェフ35才、僕31才、アレクシー23才 。
僕自身もそうでしたが、日本で23才だとまず駆け出しの坊主です。
フランスでは修行に入るのが早いので経験が何年も違います。
ある時アレクシーと二人で飲んでいた時に僕に年齢を聞いてきて31才と答えると彼は目を見開いてビックリ、逆に彼の年齢を聞いて僕がビックリ!
続く